痛くなくなったらもう大丈夫?治療を中断するリスク
2021年10月28日
こんにちは!
アス横浜歯科クリニック 歯科医師 柳井です。
今回は治療を中断してしまった時に起こるリスクについてお話していこうと思います。
歯が痛くなって歯医者に通い始めたが予約と都合が合わずに痛みがなくなったので、
治療の中断をしてしまった経験はありませんか?今回は治療を中断することで起こるトラブルをいくつかご紹介いたします。
①歯の神経を取ったまま放置する
虫歯が大きく歯の神経を取り除く治療を行った後や歯の神経が腐ってしまい歯の根の治療
を行っている場合などは治療中断のダメージが特に大きくなります。痛みがなくなったからといって治療を中断すると、歯の内部は菌に対する抵抗力が弱いがために細菌が増殖して痛みや腫れが生じることがあります。
また、歯の内部に雑菌が入っても神経は取り除かれている場合は痛みが出ることが少なく、知らないうちに虫歯が大きくなったり歯が折れやすくなったりします。
根の治療の中断を数ヶ月以上放置してしまうと治療することが難しくなり、抜歯しなければならない場合もあります。
歯の根の治療は、痛みがなくなった後も回数がかかります。中断してしまい歯の寿命を縮めてしまわないように注意しましょう。
②応急処置のまま放置する
虫歯で穴があいてしまう、歯がかけてしまう、急に痛みが出てしまうなどが起こった際に、応急的に薬で対応することや痛みを取る処置をすることがあります。
一時的に症状が改善するとそのまま様子をみたくなりますが、あくまで対処療法に過ぎず原因となっている汚れや細菌などは歯茎や歯の内部に残っているため、しばらくすると再び痛みや、腫れが出てしまう可能性があります。(1
応急処置を繰り返すだけでは状況が悪化する場合も多いため、根本的な治療を行いましょう。
③被せ物の型取りをしたまま放置する
型取り後は仮蓋をさせていただくことが多いのですが、あくまでこれは仮になります。次回の処置時には外してしまう物になりますので、お食事時等、何かの拍子に外れてしまうことがあります。
また歯は口の中で少しずつ移動しているため、長期間放置してしまうと型取りした時の型と口の中に微妙なズレが生じてしまい、被せものが入らず作り直しになってしまう可能性があります。(2
さらには、削った内部が虫歯になってしまう可能性もあります。
④抜歯しないといけない歯の放置は危険
虫歯がかなり大きく歯を残しておくことが難しい場合、残念ながら抜歯しないといけないケースがあります。
こういった歯を残しておくと、虫歯菌・歯周病菌が悪さをし、歯茎を大きく腫らせることや、激しく痛みを出す可能性があります。
さらに悪化してくると、周りの歯や周りの組織にも悪影響をもたらしてしまう可能性もありますので、早めの抜歯を検討することをお勧めします。
今回は中断してはいけない理由についてご説明させていただきました。
歯は美味しく食事をする上でも、健康を維持するためにも、言葉を発するためにも、認知症の予防などにも必要不可欠なものです。
患者さんによってそれぞれご事情があることは我々も理解しております。
対応できる範囲内でしっかり対応させていただきますので、「治療を中断してしまい、来院しにくいなぁ…」などと気になさらずに、お気軽に治療再開のご連絡・ご相談をお待ちしております。
参考文献
(1. Kakehashi S, Stanley HR, Fitzgerald RJ. The effects of surgical exposures of
dental pulps in germ-free and conventional laboratory rats. Oral Surg Oral Med
Oral Pathol 1965;20:340–9.
(2. Fujita K,Konoo T,Shimamura A. A Histopathological Study of Physiologic Tooth
Drift : Mesio-distal Drift 1990;44;271-281